ロングラン公演が可能となる劇場環境や仕組みの整備が重要

 日本発のミュージカルの海外公演は増えているのか。

「漫画・アニメ・ゲームを原作とした日本発の舞台作品の海外公演は増加しています。昨年はイギリス・ロンドンで舞台『千と千尋の神隠し』が4月から8月まで約4カ月間上演され、アメリカ・ニューヨークでは『進撃の巨人 -the Musical-』が上演されました。これらは日本人キャストによる公演でしたが、現地スタッフ・キャストによる上演として、ミュージカル『四月は君の嘘』がイギリス・ロンドンおよび韓国・ソウルで公演を行っています。今年に入ってからは、『美少女戦士セーラームーン』を原作とした『Pretty Guardian Sailor Moon” The Super Live』がイギリス・ロンドンで2月から3月まで約2カ月間上演され、さらに3月から4月にかけてシアトル、シカゴ、ニューヨークなど21都市を巡る北米ツアーを実施しました。

 そして、この夏には舞台『千と千尋の神隠し』の中国・上海公演と、漫画『ハイキュー!!』を原作とした舞台、ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』の中国ツアーも予定されています。欧米での公演が増えるとともに、これまで実施されてきたアジアでの公演も継続しており、海外公演は確実に増加しています」

 では、今後さらに 2.5次元のミュージカルが活性化していくためには、何が必要であると考えられるか。

「今後、2.5次元ミュージカルがさらに活性化していくためには、より多くのお客様に作品を届けられる環境づくりが必要だと考えています。現在、国内外のファンの方々にご支持いただき、観劇の機会も少しずつ広がってきていますが、作品によってさまざまな事情がある中で、劇場の確保をはじめとした環境面の要因も影響し、多くの作品は比較的短期間での上演となることが少なくありません。人気作品ではチケットが取りづらく、『観たいのに観られない』という状況が生じることもあります。今後は、2.5次元ミュージカルをより多くの方に届けられるよう、ロングラン公演が可能となる劇場環境や、それを支える仕組みの整備が重要になってくると考えています。観劇機会の拡大は、作品の魅力を継続的に発信していくためにも、欠かせない要素です」

 課題や障害は何であると考えられるか。

「前の質問とも重なりますが、やはり劇場の確保が大きな障壁となっています。たとえば、常に2.5次元ミュージカルを上演しているような専用劇場があれば、インバウンドのお客様にも公演情報をわかりやすくご案内できますし、『その場所に行けば必ず2.5次元作品が観られる』といったアメリカ・ニューヨークのブロードウェイのような情報発信も可能になります。こうした拠点の存在は、国内外を問わず、より多くの方に継続的に楽しんでいただくための重要な要素だと考えています。

 しかし実際には、2.5次元ミュージカルだけでなく、他の演劇作品や音楽ライブなども含めた全体の劇場需要が高く、限られた劇場数の中で公演スケジュールを確保するのは容易ではありません。さらに、専用劇場の創設となると、土地の確保や資金面、運営体制の整備など、さまざまなハードルがあります」