●この記事のポイント ・2.5次元ミュージカルが日本発のコンテンツとして大きな産業に成長 ・2023年は上演作品数236作品、動員数289万人と2000年を起点とした集計データのなかで過去最高 ・ニューヨーク、ロンドン、ソウルを始め、北米、ヨーロッパ、中国など海外での上演も活発化

 2.5次元ミュージカルが日本発のコンテンツとして大きな産業に成長しつつある。ぴあ総研の調べによれば、2023年の2.5次元ミュージカル市場は前年比7.9%増の283億円であり、一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会によれば、23年の上演作品数は236作品、動員数は289万人に上る。観劇目的のインバウンドも増えており、アメリカやイギリス、韓国など海外での上演も増えつつある。昨年にはイギリス・ロンドンで舞台『千と千尋の神隠し』が約4カ月にわたるロングラン上演され、メディアでも大きく取り上げられていた。日本が世界に誇るコンテンツである漫画・アニメ・ゲームを起点とする2.5次元ミュージカルの現状、そして、さらなる市場拡大の可能性について追ってみたい。

●目次

「2.5次元ミュージカル」の定義

 まず、「2.5次元ミュージカル」の定義について、日本・海外における2.5次元ミュージカルの認知拡大と普及に向けた活動に取り組んでいる日本2.5次元ミュージカル協会は次のように説明する。

「当協会は2014年3月、世界中が注目する日本の新しいカルチャーとしての2.5次元ミュージカルをより多くのお客様にご覧いただくことを目的として設立されました。協会が定める2.5次元ミュージカルの定義は、日本の2次元の漫画・アニメ・ゲームを原作とする3次元の舞台コンテンツの総称で、音楽や歌のない演目、ストレートプレイも含めてそう呼んでいます。『2.5次元』という言葉自体は、早くからこのジャンルに注目し、育ててくださったファンの間で使われてきた呼称です。協会が設立された2014年は、今でもこのジャンルの代表作の一つであるミュージカル『テニスの王子様』が初演から10年以上を経て、継続的な人気舞台シリーズとして広く認知され、さらに多くの人気作品が次々と舞台化されるようになっていた時期でした。こうした背景のもと、日本が誇る演劇ジャンルの一つとして、2.5次元ミュージカルを一過性のブームで終わらせることなく、国内外に広く認知されることを目指して、当協会は設立されました。当協会の会員は、演劇制作会社のみではなく、原作となる漫画の出版社やゲーム会社、各種メディアをはじめ、チケット関連会社、グッズ関連会社、最近では配信に関わるネットワーク関連企業など多種他業種の団体で構成されています。

 当協会の主な活動としては、会員が主催・制作する演目を中心に、2.5次元ミュージカルの認知拡大と普及を目的としたプロモーション支援や、会員に向けた各種情報の提供などを行っています。年間作品数、動員数などの市場規模の統計も実施し、会員や各種メディアに提供しています。基本的にはBtoBの事業ですが、一般ファン向けには『2.5フレンズ』という無料メルマガ組織の運営を通じて、チケット情報をはじめとした作品に関する各種情報を発信するBtoCの取り組みも行っています。

 海外に向けては、インバウンド対応として、協会設立当初より海外向けチケットの販売システムを確立し、販売会社等と連携したサービス提供を行っています。また、海外における2.5次元ミュージカルの認知を広め海外公演のサポートやプロモーションなども積極的に行っています」