配信、グッズ販売など周辺市場も拡大
現在の国内における2.5次元のミュージカルの年間の上演本数や観客動員数、配信やグッズ販売などの市場はどのような状況なのか。
「当協会では毎年、ぴあ総研と連携し、2.5次元ミュージカルの上演作品数および観客動員数を統計・発表しています。現時点では2024年のデータは集計中ですが、2023年の数字は上演作品数236作品、動員数289万人と、どちらも2000年を起点とした集計データのなかでも過去最高の数字を記録しました。先にご紹介した無料メルマガ組織『2.5フレンズ』の登録者数も25万人を超え、関心の高まりを裏付ける数字となっています。
配信については、協会設立時はリアルな公演のみの演目が多く、人気公演が千秋楽に映画館でのライブビューイングを実施するといった事例はありましたが、コロナ禍をきっかけにさまざまな形態の配信を活用する公演も増え、国内外問わずその市場は拡大しているといえると思います。また、2.5次元ミュージカルにおいて、公演のチケット収入に加えてグッズ販売による収益は当初より大きなものでした。現在も演目に応じたグッズ開発や販売経路の拡大が継続的に行われています。これら周辺市場の拡大も、2.5次元ミュージカルの持続的な発展を支える要素となっています」
コロナ禍での漫画の購読者数の増加やアニメ配信の広がりも影響
今、2.5次元のミュージカルが盛り上がり、注目されている理由は何であると考えられるのか。
「最大の要因は、やはり原作となるコンテンツの圧倒的な人気にあると考えています。日本が世界に誇る、漫画、アニメ、ゲームが原作である2.5次元ミュージカルは、コロナ禍において、原作である漫画の購読者数の増加、アニメ配信の拡大、ゲームユーザーの増加を背景に、それらを舞台化した2.5次元ミュージカルにも、より多くより幅広い層からの関心が集まるようになったのだと思います。
また、演劇である2.5次元ミュージカルは、劇場で自分たちが好きな原作の世界観をリアルに体感・共有できる点も大きな魅力かと思います。好きなキャラクターが目の前で言葉を発し動く、原作の世界観を再現する舞台は、演劇初心者であっても入りやすく、感動を得られるコンテンツとなっています。海外のお客様が字幕なしでも日本語のセリフに一喜一憂している姿を見ると、原作の持つ力を実感します。そうした原作への共感や没入感こそが、今の2.5次元ミュージカルの盛り上がりを支える要素になっていると考えています」
海外におけるファンの広がりや人気、市場規模は、どのような状況なのか。
「当協会の設立時より、日本の漫画・アニメ・ゲームに対する海外からのリスペクトは高く、これらを原作とした舞台化の総称である2.5次元ミュージカルの海外での成功の可能性は非常に高いと感じていました。コロナ禍以前には、日本文化の一つとしてフランスのパリやアメリカのニューヨークなどで実施された、日本文化イベントに招聘されることも多く、実際に海外の日本の漫画・アニメ・ゲームファンの2.5次元ミュージカルへの期待、熱量を感じることができ、その可能性はますます高くなっていました。
そうした反応を受け、さらなる海外公演への勢いをつけたところではありましたが、パンデミックとなり海外での公演については一時的に困難な状況となりました。ただ、先にお話ししたように、コロナ禍においては漫画の購読者数の増加やアニメ配信の広がり、ゲームユーザーの拡大など、原作コンテンツの浸透が進みましたが、こうした動きが海外にも広がったことで、日本の漫画・アニメ・ゲームへの関心はさらに高まり、結果として2.5次元ミュージカルの海外公演の現実味も高まりました。現時点ではまだ『市場規模』といえるような明確な数字を出すことはできていませんが、昨年から今年にかけて確実に認知度は広がり、人気も着実に伸びています。今後のさらなる展開が期待される分野です」