背景としては先進国は生活の豊かさと共に低賃金で過酷な労働を社会的に受け入れない方向になりやすく、一生懸命働く人を「かわいそうな人」ぐらいにみる傾向が強いのです。私なんて白人社会のマリーナの中に事務所を構えているわけですが、「オーナーなのにあんなに働いてかわいそう」ぐらいにしか思われていません。

端的な例を出しましょう。アメリカはウクライナに武器供与をするとバイデン氏やトランプ氏が述べ、支援の姿勢を見せています。ところが武器が計画通り流れないのです。武器ビジネスはアメリカの十八番であるのに生産能力が全然ないのです。英国BBCは7月1日付で「アメリカ政府は1日、ウクライナへの兵器供与の一部を停止したと発表した」とし「トランプ政権関係者の一部からは、国内の兵器備蓄が逼迫(ひっぱく)していると、懸念の声が上がっていた」と報じています。制限する武器弾薬にはパトリオットを含む防空ミサイルや精密誘導弾も含まれるとされます。

極端な話、アメリカは戦争をすれば勝てるか、といえば短期決戦なら勝てるが地上戦のように長期だと勝てないとも言えるのです。それぐらいアメリカの生産力は劣ってしまっています。よって日本企業が今回の関税問題を踏まえ、「アメリカに行くのか?」という判断に多くが二の足を踏んでいるのです。もしも仮に私のこの大雑把ではありますが、推論が正しければ先々、25%の関税を払っても日本企業はアメリカで十分利益を出すことができるはずです。言い換えれば数年後に関税対策で生まれた数多くのアメリカ製商品は競争力がない公算が高くなるのです。

その時、時の大統領が「関税政策は失敗だった」と認め、関税率の緩和ないし、撤廃をすればアメリカに投資した企業は更なる損失を抱えるという悪循環に陥る公算すらあるのです。台湾半導体大手のTSMCがアリゾナの工場では苦労しています。台湾で素晴らしい成果をあげているからと言ってアメリカでそれのコピーできるわけではないのです。理由は台湾人だからこそできたビジネスへの発想、姿勢、捉え方など社会の根幹がアメリカのそれとかなり違うからです。彼らの工場はまもなく稼働すると思いますが、相当苦戦するはずで、当面はそのアウトプットを見ることで本当にアメリカに莫大な投資をして生産することが正しいのか、判断材料にすればよいと思います。