構造的な事情とは、アメリカが抱える空前の規模の財政赤字であり、それと連動している貿易赤字だ。この問題の深刻さは、トランプ大統領がどれほどの奇人であったとしても、個人的な性癖などによっては全く説明することのできないものだ。

もちろん、日本の財政赤字も深刻である。アメリカと比して、経済の疲弊の度合いも高い。両国ともに、全く余裕がない状態である。

だからこそ、引くに引けない状態に陥っている事情もある。他方、何でもいいから、少しでも成果のあるやり方でまとめて、損切りをしなければならない事情を抱えているとも言える。

アメリカ側も、日本と交渉をまとめた、と宣言したい大きな動機付けを持っている。日本の側も同じだ。交渉を完結させる、ということに現実的な目標を置き、苦渋の政治判断をする時期が迫っている。

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