8月1日の25%の米国の対日関税の導入日が近づいてきている。赤沢経済再生相が8回目の渡米を行っている。多くの人たちが指摘しているように、大臣が8度も渡米するというのは、いかにも交渉が難航していることを印象付ける。ベッセント財務大臣が来日した際も、交渉に関することは口にしない代わりに、「おもてなし」に終始したというが、「汗をかいている」アピールで、人情に訴えるやり方は、奏功する見込みが乏しい。
とはいえ、参議院選挙が終わった直後の交渉だ。アメリカ側も、参議院選挙後の日本政府の新しい態度に期待感があるだろう。選挙結果への悪影響を詮索することなく、しかし長期的な日本の国益を考えて、大きなまとめをする最後のチャンスだと思われる。
私は、これまで交渉の行方に悲観的である旨の文章を何度書いてきた。それは主に、日本国内の主戦論の雰囲気を感じてのことだ。日本の学者・評論家層の間では、「トランプはバカだ、支離滅裂だ、ただそれだけだ、こんな奴に屈してはいけない」といった好戦的な勢いが強い。恐らく選挙でも、参政党の支持者に対して、同じような侮蔑的な言葉を投げかけていただろう。親露派とみなす人々に対しても同じだ。
こうした「専門家」の方々が、どれくらいの数の気に入らない勢力に、次々と侮蔑的な言葉を投げかけて、特定ファン層にSNSで訴えかける毎日を過ごしていらっしゃるのかまでは、よく知らない。しかし、日本でスマホに向かって、「ロシアは負けなければならない、参政党は負けなければならない、トランプは負けなければならない」と叫び続けていても、現実は何も変わらない。
私自身も、トランプ大統領が素晴らしい人物だとか、トランプ大統領の政策は成功を約束されているとかと言いたいわけではない。ただ、全てをトランプ大統領の気まぐれなどの個人的な性癖に還元してしまうのは、危険だ、と感じている。背景に存在している、より構造的な事情を見なければならない。