一方、「参政党」は、既存政党への不満や浮動層を取り込み、SNSを駆使した草の根運動とデジタル動員によって急速に支持を拡大した新興政党である。国政・地方議会での議席獲得は、従来の政治的枠組みでは捉えきれない有権者のニーズを捉えた結果と言える。
彼らは、日本の伝統や国益を重視する保守的な政策を掲げる一方で、選択的夫婦別姓への反対や、科学的根拠に乏しいコロナ関連の主張、排外主義的・排他的な発言などで論争を呼んでいる。そのSNS戦略は支持拡大に貢献しているが、切り抜き動画などによる誤解や、攻撃的な言説の拡散といったリスクも内包している。
両現象は、現代日本社会における共通の潮流を反映している。
第一に、既存の枠組みや権威に対する人々の不満や不信感が、新たな活動や選択肢への関心を高めている点である。「推し活」においては、画一的な価値観からの解放や多様な自己表現の追求が見られ、「参政党」においては、既存政党への不満が新たな政治的受け皿を求める動きにつながっている。
第二に、SNSをはじめとするデジタルプラットフォームが、両現象の拡大と深化において決定的な役割を果たしている点である。情報の拡散、コミュニティ形成、共感の醸成、そして動員の手段として、デジタルツールは不可欠な存在となっている。しかし、その一方で、金銭的トラブルや人間関係の摩擦、「フェイクニュース」の拡散といった負の側面も顕在化している。
将来的に、「推し活」は多様なライフステージに浸透し、経済的影響力をさらに拡大する可能性が高い。企業は、この変化に適応し、より倫理的かつ持続可能なファンエンゲージメントの形を模索する必要があるだろう。
一方、「参政党」は、その支持基盤を固め、既存の政治勢力との間でどのような影響力を行使していくのかが注目される。彼らの政策が社会に与える影響や、批判的言説への対応は、今後の日本政治の動向を左右する重要な要素となるだろう。