その文化的要因の候補として注目されているのが、上司の行動、つまりリーダーシップスタイルです。

例えば、職場のリーダーが常に高圧的な態度で、「自分の言っていることが正しい」と信じ込んでいるタイプだと、チームのメンバーは萎縮してしまい、自由な発言ができなくなるでしょう。

そうしたリーダーの下では、メンバーの「心理的安全性(psychological safety)」が大きく下がってしまいます。

心理的安全性とは、職場の中で自分の考えや気持ちを臆することなく誰に対してでも安心して発言できる状態のことです。

従業員の「心理的安全性」を保つにはどんなリーダーシップが求められるのか?
従業員の「心理的安全性」を保つにはどんなリーダーシップが求められるのか? / Credit: canva

この心理的安全性を高く維持する上で、研究者たちは「謙虚なリーダーシップ」こそ必要とされているのではないかと考えます。

ここでいう「謙虚さ」とは、自らの能力の限界や過ちを正確に把握する意欲があり、他者の強みや主張を評価し、常に学びの姿勢を忘れないというリーダーシップのスタイルです。

このようなリーダーシップが示されると、従業員の仕事へのコミットメント、ポジティブな感情、および職場でのパフォーマンスが向上すると期待されます。

しかし従来の研究では、こうした「リーダーの謙虚さ」「心理的安全性」「プレゼンティーズム」の3つがどのように関係しているのかは調べられていませんでした。

そこで研究チームは今回、日本の複数企業を対象として、リーダーの謙虚さが従業員の心理的安全性、およびプレゼンティーズムにどう作用するかを調べてみました。

リーダーの「謙虚さ」は従業員にどう作用する?

本調査では、日本国内にある11社の企業から463名の従業員をリクルートし、オンライン調査に参加してもらいました。

参加者は男性224名、女性238名で、平均年齢が35.67歳。

全員が日本人で、職種はIT関連から管理職、営業職、サービス業など多岐にわたります。