量子ロッドという素材自体の改良だけでなく、それをデバイスに組み込むための様々な工夫や調整が合わさったことで、初めて実際の性能として実現できたのです。

もちろん、この研究成果がすぐに私たちの手元の製品として登場するためには、まだいくつかの課題が残っています。

例えば、今回は緑色の量子ロッドLEDにおいて高性能を示しましたが、ディスプレイ技術として本格的に普及するには、赤色や青色の量子ロッドLEDも同様に高い性能で作り出す必要があります。

また、量産する際のコストや安定した製造プロセスの確立など、産業化に向けた技術的な壁を乗り越える必要もあります。

しかし、今回の研究成果は、それらの課題を乗り越えるための重要な一歩を踏み出したことを示しています。

量子ロッドLEDがもたらすディスプレイの未来は、非常に明るく、色鮮やかで、しかも耐久性があるという、かつてないほど魅力的なものになるでしょう。

近い将来、私たちが使うスマートフォンやテレビ、VRやARデバイスなどの画面に、この新しい量子ロッドLEDが使われている可能性は決して低くありません。

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元論文

Highly Efficient and Stable Green Quantum Rod LEDs Enabled by Material and Charge Injection Engineering
https://doi.org/10.1002/adma.202503476

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部