誰かに褒められると嬉しくなりますよね。自分の存在や努力が認められたようで、心がふわっと温かくなるものです。

でも、もしその褒め言葉が、あなたを縛る“見えない鎖”だとしたら?

アメリカの心理学者マーク・トラヴァース氏は、日常的に交わされるある種の褒め言葉が、実は私たちに「こうあるべき」という無言のルールを押しつけ、内面に深い影響を与えていると警告しています。

目次

  • あなたを縛る誉め言葉――「どうしてそんなに冷静でいられるの?」
  • 「君だけが話を聞いてくれる」という誉め言葉が”あなたを壊す”かも

あなたを縛る誉め言葉――「どうしてそんなに冷静でいられるの?」

私たちは褒め言葉を好意的に受け取ります。

誰かに「すごいね」「助かるよ」と言われれば、承認されたと感じますし、信頼関係も築きやすくなるでしょう。

ところが一部の誉め言葉は、「そのままのあなた」ではなく、「都合のいいあなた」だけを評価する性質を持っています。

つまり、相手にとって“心地よい”あなたの一部だけを繰り返し褒めることで、知らず知らずのうちにあなたの人格全体を特定の枠に押し込めていくのです。

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誉め言葉は基本的に心地よいものだが…… / Credit:Canva

そのような誉め言葉の1つが、「どうしていつもそんなに冷静でいられるの?」です。

一見これは、落ち着いていて動じないあなたを讃える美しい言葉に聞こえるかもしれません。

感情に流されず、冷静に判断できる人は尊敬される存在ですから、こう言われれば嬉しくなるのは自然な反応です。

でもこの言葉は、ある視点から見れば「感情を表に出さないあなたに価値がある」というメッセージを含んでいます。

つまり、怒りや悲しみ、不安などの“乱れた感情”を表に出すあなたは歓迎されていないという、暗黙のルールが敷かれているのです。

カナダのヨーク大学(York University)の2008年の研究では、少女たちは「怒りを言葉にすること」を否定される経験を重ねるうちに、次第に怒りや感情を無くしていくと報告されています。