この効果は、CKD患者においてさらに顕著でした。

10%食塩水に対する忌避反応は、甘味なしでは15.2%が「不快」と答えましたが、甘味を加えるとわずか3.0%に。

20%濃度では、21.2%から7.6%へと大きく減少しました。

CKD患者はもともと塩味の認知感度が低いため、甘味が塩味の不快感を和らげることで、高濃度の塩分でも気づきにくくなるのです。

これは、彼らが無意識に塩分過剰摂取に陥る要因のひとつかもしれません。

一方、酸味については健常者ではやや忌避反応が減少したものの、CKD患者では効果が見られませんでした。

これは、CKD患者が酸味自体を感じにくくなっているためと推察されます。

苦味に関しては、甘味を加えてもほとんど変化はなく、依然として強い忌避反応が持続しました。

これは苦味が毒物のサインとして本能的に避ける味であるため、味覚の相互作用による影響を受けにくいのかもしれません。

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甘じょっぱいお菓子や料理は魅力的だが、塩分を控えたい人は要注意 / Credit:Canva

この研究から得られた重要な教訓は、「減塩を目指すなら、単に塩を減らすだけでなく、甘味の摂取にも注意を払うべき」という点です。

特に「甘じょっぱい」味付け、たとえば市販の照り焼き弁当や甘酢だれ、加工食品、お菓子などは、塩分の「隠れた増加要因」になり得ます。

甘味を控えれば、塩味の感受性が回復し、「これはちょっと塩辛すぎる」と気づく感覚も戻ってくるかもしれません。

本研究は、食品企業と大学が協力して実施した産学連携の好例でもあり、将来的には「減塩をサポートする調味料の開発」など、実用的な応用にもつながる可能性があります。

「塩分のとりすぎ」を気にしている皆さん、甘じょっぱい味には気をつけてくださいね。

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参考文献

【論文掲載】食塩摂取の新たな盲点:甘味が塩辛さの感覚を鈍らせる-慢性腎臓病患者の味覚変化に加え、甘じょっぱい食品が塩分摂取量に与える影響を解明-
https://www.kpu-m.ac.jp/doc/news/2025/20250716-press1.html