その理由のひとつに、「塩分に対する感度の低下」、特にCKD患者での「塩味への忌避反応の鈍化」が指摘されてきました。
またこれには、「味覚相互作用」と呼ばれる現象が関わっているかもしれません。

味覚相互作用とは、異なる味が同時に存在することで、それぞれの味の感じ方が変わるというものです。
例えば、スイカに塩をかけたり、コーヒーに砂糖を加えたりすることで、それぞれの味が引き立つように感じられるのも、その一例です。
そして現実の食事では塩味だけでなく、甘味・酸味・苦味・うま味といったさまざまな味覚が複合して現れます。
特に「甘じょっぱい」料理のように、甘味と塩味が同時に口に入るケースは多くあります。
このとき、味覚はどのように感じ取られ、どんな相互作用が起きているのでしょうか?
そこで今回の研究では、「甘味を加えると塩味に対する忌避反応がどう変わるか」、さらに「酸味や苦味に対しても同様の効果があるのか」について検証することが目的とされました。
研究チームはおよそ100名の健常者と66名のCKD患者を対象に、濾紙に塩味(NaCl)、酸味(クエン酸)、苦味(キニーネ)、甘味(ショ糖)を染み込ませた味覚テストを実施。
それぞれの味に対して「どの濃度から嫌だと感じるか(忌避反応閾値)」を測定しました。
さらに、それぞれの塩味・酸味・苦味に対して、80%ショ糖水を等量混合した試薬を用いて、甘味添加の影響も調べました。
甘味が加わることで塩辛さの感覚が鈍ると判明
まず注目すべきは、健常者における変化です。
5%濃度の食塩水に対して「不快だ」と答えた人は32%いましたが、甘味を加えるとその割合は17%に減少。
同様に、10%濃度では45%から25%へと忌避反応が減少しました。
つまり、甘味が加わることで塩辛さの感覚が鈍るという現象が明確に示されたのです。
