SMBを主役に変えた「フライホイール」が成長のエンジン
MNTNの急成長を支えるのは中小企業(SMB)をターゲットにした戦略と、それによって生まれる強力な「フライホイール効果」だ。
まずテレビ広告を「運用型」に変え、少額予算から出稿できるようになったことで、多くのSMBが広告予算をMNTNのプラットフォームに投下するようになる。MNTN上で流通する広告費が増えれば、同社はNBC、Paramount、Foxといった大手ストリーミングネットワークに対する交渉力を増し、より安く広告枠を仕入れることが可能になる。
広告枠の原価が下がれば当然、広告主目線ではROASが改善し、新たな顧客を呼び込む実績となる。事実、同社への売上のうちインバウンドの問い合わせ経由で獲得したリードは64%と過半を占める。こうして顧客拡大とROAS改善のサイクルが回り、競合を寄せ付けない「Moat(堀)」を築いているというわけだ。

MNTNは2022年第1四半期以降、プレミアム広告枠の仕入れコストを四半期平均で約8%も削減できているという。顧客数は2019年の142社から2024年には2225社へと爆発的に増加した。
顧客の約92%はこれまでテレビ広告を出した経験がないSMBであり、新たな市場を切り開いていることの証左といえる。従来のテレビ広告は、既存の大口広告主を主要顧客とする広告代理店やプラットフォームの独壇場であった。MNTNはその常識を覆し、これまでテレビという媒体を検討することさえなかった膨大な数の企業に、その門戸を開いたのである。
SMBにとっての参入障壁としてはCM制作にかかる高額な費用と時間も挙げられるが、これもQuickFrameやMaximum Effortといった子会社を通じて迅速かつ低コストでプロ品質のクリエイティブを制作できる体制を整えることで取り払っている。予算の少額化や成果の見える化にとどまらず、実際の出稿に必要なオペレーションまで巻き取るのが優位性だ。