そこで南洋理工大学は、新たな冷却塗料「CCP-30」を開発しました。

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蒸発冷却を利用した新塗料 / Credit:Hong Li(NTU)et al., Science(2025)

この塗料の最大の特徴は、放射冷却・蒸発冷却・太陽反射という三つの冷却メカニズムを同時に備えている点です。

特に注目できるのは、「蒸発冷却」を採用している点です。

CCP-30は、セメントを基盤とした構造にナノ粒子を組み込んだ多孔質素材で、水分を塗料の内部に、重量の約30%まで保持できます。

そして吸収された水分は時間とともに蒸発し、その際に表面の熱を奪うのです。

これはまさに人間が汗をかいて体を冷やすのと同じ仕組みです。

また、水分を保つために塗料には微量のポリマーと塩分が加えられており、これがヒビ割れ防止や長期的な水分保持に貢献しています。

空気中の湿度や雨から水分を吸収し、自己補水機能を持つため、長期間にわたり安定した冷却性能を発揮できるのです。

さらにこの塗料は、88〜92%の太陽光を反射し、95%の熱を赤外線として放出する能力も持っています。

では、実際に新しい塗料を用いると、どれだけの冷却効果があるのでしょうか。

新しい「蒸発冷却」塗料により、エアコンによる電力消費が40%減

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高温多湿のシンガポールで実験 / Credit:Hong Li(NTU)et al., Science(2025)

新しい塗料の実力を確かめるために、研究チームは3棟の小型住宅に、それぞれ通常の白塗料、市販の冷却塗料、CCP-30を塗布しました。

場所は高温多湿なシンガポールであり、従来の冷却塗料には過酷な環境下で、2年間にわたる屋外実験が行われました。

その結果、時間が経つにつれ、通常の白塗料と市販の冷却塗料は紫外線や降雨の影響で黄ばんでしまい、反射率も低下していきました。

しかし、CCP-30は白さを保ち続け、反射性も安定したままでした。