ハンガリーやポーランドをはじめ、オランダ、オーストリア、ノルウェーなど多くの国でも、脱炭素の是非をめぐって世論が二分されている。欧州議会においても、こうした各国の懐疑派・反対派が勢力を伸ばしつつあり、ネットゼロへのブレーキをかける動きが強まっている。
欧州の既成政党やメディアはこれら新興の大衆政党に対し「極右」「反科学」などとレッテル貼りして封じ込めようとしたが、この戦術は有権者の反発を招き逆効果となってきた。かえって「自分たちの暮らしを顧みないエリート vs. 庶民の声を代弁する新勢力」という構図が鮮明になり、大衆政党への支持が広がってきた。
さて、日本はどうだったか。欧米が脱炭素政策の現実的な是非をめぐり激論を戦わせるようになったのと対照的に、日本では脱炭素は「道徳的な目標」と位置付けられ、その経済的負担に疑問を差し挟むことすら憚られる空気がある。これまでのところ、日本の国会で2050年カーボンゼロ目標の撤回や見直しを公言している勢力はごくわずかで、参議院の参政党(現有2議席)と、衆議院の日本保守党(現有3議席)だけだった。
主要野党も含め与野党すべてが「オール与党」状態でグリーン政策を推進している点で、日本は先進国の中で例外的な存在となっていた。
まもなく実施される7月の参議院選挙を前に朝日新聞が主要政党に実施したアンケートでも、温室効果ガス排出の削減について「積極的に進める必要はない」と答えたのは回答のあった9政党中、参政党ただ一党のみだった(日本保守党は回答せず)。参政党は理由として「地球温暖化は科学的に議論の余地がある」「偏りのないエビデンスに基づく検証が必要」と回答している。
その参政党が、いま支持を広げている。参院選の情勢調査では、政党支持率で自民党、立憲民主党に次ぐ第3位に躍進する勢いだと報じられている。
実際、選挙ドットコムとJX通信社が7月12~13日に行った世論調査でも、参院選比例投票の意向で参政党は電話調査で前月比5ポイント増の第3位に浮上し、ネット調査でも国民民主党と並ぶ3位となった。この結果は、かつて「その他」扱いだった新興小政党が、いまや無視できない存在に成長したことを示している。