5. 日常が一瞬で終わる時「ママ、愛してる」:PSA182便

 1978年9月25日、サンディエゴの空は完璧な快晴だった。パシフィック・サウスウエスト航空182便は、空港への着陸態勢に入っていた。管制から小型セスナ機の接近を知らされていたが、クルーは見失ってしまう。

 CVRには、クルーたちのリラックスした日常会話が記録されている。しかし、その雰囲気は一瞬で変わる。「セスナはもういないよな?」「そうだと思う」「だよな」。その11秒後、下から迫るセスナに気づいた副操縦士が叫び、機長が驚きの声を上げた。

 空中衝突の轟音の後、失速警報が鳴り響く。墜落までの数秒間、絶望的な状況の中で、機長が最後に発した言葉は「This is it!(もうだめだ!)」。そして、「Mom, I love you!(ママ、愛してる!)」だった。

 ブラックボックスが語る物語は、あまりにも痛ましく、そして人間的だ。絶望の淵で愛する人を想う声、不正義に立ち向かう勇気の声、混乱の中で必死に活路を探す声。これらの声は、テクノロジーの進化だけでは決して埋められない、人間の脆さと強さの両方を我々に突きつける。次に空を見上げるとき、私たちはただの鉄の塊ではなく、多くの人々の想いを乗せて飛ぶ奇跡を見ているのかもしれない。

参考:Listverse、ほか

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