3. 「奴らを倒そう!」乗客たちの反乱:ユナイテッド航空93便

 2001年9月11日、ユナイテッド航空93便は4人のテロリストにハイジャックされた。しかし、乗客たちは機内の電話で他の旅客機がニューヨークやワシントンD.C.に激突したことを知り、自分たちの飛行機もまた「飛ぶ爆弾」として使われる運命にあることを悟る。

 CVRに残された音声は、他とは全く異なる。そこには、絶望だけでなく、人間の勇気が記録されていた。乗客たちが食事用のカートでコックピTトのドアを突き破ろうとする音。テロリストが「ドアを押さえろ!」と叫ぶ声。そして、乗客たちの「レッツ・ゲット・ゼム!(奴らを倒そう!)」という反乱の雄叫びが、墜落の最後の瞬間まで続いた。

 彼らの英雄的な行動により、テロリストの標的だったとされるワシントンD.C.への突入は阻止された。この録音は、遺族にのみ公開されている。

4. 最新鋭機を襲った「見えない失速」:エールフランス447便

 2009年6月1日、最新鋭のエアバスA330で運航されていたエールフランス447便は、大西洋上で嵐に遭遇。速度を測るピトー管が氷結し、自動操縦が解除された。機長の休憩中、操縦桿を握っていた二人の副操縦士は混乱に陥る。

 一人の副操縦士が無意識に操縦桿を引き続けたため、機体は揚力を失う「失速」状態に陥った。その後4分間、失速警報は75回も鳴り響いたが、彼らは最後まで状況を正しく認識できなかった。

 最も胸が締め付けられるのは、墜落直前の「でも、僕はずっと操縦桿を引いていたんだ!」という言葉だ。それは、最新技術をもってしても防げない、人間の認知の限界と混乱が招いた悲劇を物語っていた。