チームによると、「熱放射ダイオードが、放射される赤外線から電力を生み出す」というのです。

では熱放射ダイオードは、どのように利用され、またどれほどの電力を生み出してくれるのでしょうか?

夜間に僅かな電力を生成!今後の発展に期待

日中に蓄えられたエネルギーが夜間に赤外線として放出される
日中に蓄えられたエネルギーが夜間に赤外線として放出される / Credit:Nicholas J. Ekins-Daukes(UNSW)_’Night-time solar’ technology can now deliver power in the dark(2022)

熱放射ダイオードは、太陽光の働きを利用しています。

日中、地表が太陽光で温められると、夜にこのエネルギーが赤外線として宇宙空間に放出されます。

熱放射ダイオードは赤外線の放射から電力を生成できるので、このプロセスに挿入することで、夜でも発電できるのです。

太陽光発電と言えば、太陽光エネルギーが地球に入ってくるときに発電する「ソーラーパネル」が一般的です。

しかし今回開発された熱放射ダイオードは、太陽光エネルギーが地球から出ていくときに発電するものなのです。

熱放射ダイオードの概念図。放射される赤外線から電力を生み出す
熱放射ダイオードの概念図。放射される赤外線から電力を生み出す / Credit:Nicholas J. Ekins-Daukes(UNSW)et al., Thermoradiative Power Conversion from HgCdTe Photodiodes and Their Current–Voltage Characteristics(2022)

そして実験により、この新しいプロセスでの発電が実証されました。

ただし発電量は1平方メートルあたり2.26ミリワットと、ソーラーパネルの約10万分の1でした。

現段階では一晩中発電しても、朝に一杯のコーヒーを沸かすことさえできません。

とはいえチームは、赤外線放射による発電が実証できたこと自体に価値を見いだしています

「理論的には、ソーラーパネルの10分の1程度の電力を生み出すことが可能」と述べており、今後の進展に期待できるからです。