では、そうした腺を持たないアリたちはどうするのでしょう?

そこで研究チームは「フロリダオオアリ(学名:Camponotus floridanus)」を対象に調査を開始しました。

アリは仲間の脚を切り落とす「切断オペ」ができた!

チームは今回、フロリダオオアリの脚における「大腿部」「すね先」のケガに焦点を当ててみました。

もっと分かりやすく言い換えれば、足の付け根に近い太ももの部分か、ひざから先の細い部分です。

太ももとすね先のケガに注目
太ももとすね先のケガに注目 / Credit: Erik.T. Frank et al., Current Biology (2024), canva/ナゾロジー編集部

これらの場所にケガを負った場合、アリたちがどんな対処をするか観察しました。

すると興味深いことに、アリたちは部位に合わせて、次の2つのアプローチを取ることが判明しています。

それは「グルーミング」「切断オペ」です。

グルーミングは仲間の傷口を念入りに口で掃除することで、細菌を取り除くという処置。

切断オペはその名の通り、傷口がある部分を脚ごと切り落とす処置を指します。

そして注目すべきは、すね先のケガであればグルーミングだけで済ませ、太もものケガであればグルーミング後に切断オペを施すことでした。

要するにアリたちは、患者の傷の部位から処置の方法を柔軟に変えていたのです。

こちらが実際の「切断オペ」の様子。

黄色のマークを付けられたアリが患者になります。(※ 音声はありません)

動画からもわかるように、アリは仲間のケガに対して強力な顎を使って切断処置を施しており、ケガをしたアリもその処置を受け入れています。

グルーミングだけにせよ、切断オペにせよ、治療を受けたアリの生存率は劇的に上がっていました。

まず、すね先のケガを放置されたアリは生存率が15%未満だったのに対し、グルーミングを受けたアリは75%にまで高まっています。