しかし、集中力の欠如にはADHDと似ているようでまるで異なる別の症状があるのです。
それがCDS(認知的離脱症候群)です。
ADHDとCDSはどちらも「集中力がない」と言われてしまう点は同じなのですが、大きな違いがあります。
それはADHDには集中力を発揮する力があるのに対し、CDSはそもそも集中力を発揮すること自体が難しくなっている点です。
ADHDの人には何かに強く集中する力があります。
ところが多動性や衝動性の問題から、興味の対象が他へ移りやすく、すぐ他のことが気になってしまうため、結果として注意散漫になって集中力が欠如した状態になってしまうのです。
なので集中力自体は常人よりも遥かに高い場合も多く、自分の好きなものであれば、集中力が不安定になるどころか、寝食を忘れて何時間でも没頭することがあります。

対照的に、CDSの人は何らかの異常で、本来脳に備わっているはずの認知能力や処理速度が低下しています。
処理速度が遅いということは、情報を取り込んで理解し、応答するのに時間がかかることを意味します。
これはCDSが以前まで「鈍い認知テンポ(Sluggish Cognitive Tempo:SCT)」と呼ばれていたことからもよくわかります。
CDSの人は周りの人々に比べて、話の理解や情報の処理速度のテンポが遅いので、今問題となっていることについて行けないことが多々あります。
そうするとどうなるでしょうか?
話について行けないので、話を聞くことを放棄してしまい、自分の中だけで空想を楽しみ始めたり、一点見つめたままボーっとしてしまうのです。
このように、認知行動に追いつけなくなって離脱してしまうことから、現在この症状はCDS(認知的離脱症候群)と呼ばれるようになっています。
そしてCDSを持つ人たちもまた、日常生活の質や学業成績の低下、社会的交流において大きな困難に直面しやすくなっています。