夜中に赤ちゃんが泣き出したとき、誰が最初に目を覚ますでしょうか?
「母親のほうが敏感に気づく」という話はよく耳にします。育児中の家庭では、「お父さんはぐっすり寝ていて起きない」なんてエピソードが笑い話として語られることもあります。
このような話を聞くと、「女性のほうが赤ちゃんの声に反応しやすいのか?」という疑問が湧いてきます。
確かに母性本能などという言葉もあるように、女性の方が育児中に子どもの小さな変化やサインに気づきやすく、また育児に対する意欲が男性より本能的に高いという印象が一般的です。
ですが、本当に“性別の違い”で赤ちゃんの泣き声への反応が変わるでしょうか?
この素朴な疑問に、科学的な方法で答えようとしたのが、デンマークのオーフス大学(Aarhus University)の研究チームです。彼らは、男女の聴覚における差と、赤ちゃんの泣き声への反応について実験を行いました。
この研究の詳細は、アメリカ心理学会の学術誌『Emotion』に掲載されています。
目次
- 赤ちゃんの声に対する男女の反応を科学的に調べてみた
- 聞こえ方に大きな性差はなかった
赤ちゃんの声に対する男女の反応を科学的に調べてみた

この研究の出発点にあったのは、「赤ちゃんの泣き声に女性のほうが敏感である」という通説です。
たとえば、夜中に赤ちゃんが泣き出したとき、最初に飛び起きて対応するのは「母親」というイメージを多くの人が持っているのではないでしょうか。
育児経験者のあいだでも「夜中に赤ちゃんが泣いたときパパは起きないのに、ママはすぐ目を覚まして対応する」といった話はよく語られます。
こうした現象は、「女性は母性本能があるから赤ちゃんの声に敏感で、男性にはその能力がない」などと説明されることがあります。
2009年にはイギリスの研究チーム(MindLab)が、睡眠中の男女に様々な音を聞かせる実験を行ったところ「赤ちゃんの泣き声で起きる割合は、女性のほうが圧倒的に高かった」「男性はむしろアラーム音や車の音のほうに反応した」と発表し、メディアで大きく報道されました。(ただし論文発表はされていない)