こうして研究チームは、「ペパーミントティーを飲んだ後に認知機能が向上するかどうか」「その向上が脳の血流の変化と関係しているのかどうか」という2つの問いに対して、明確なデータを集めたのです。

ペパーミントティーは記憶力や注意力を向上させる

Credit:canva

研究の結果、ペパーミントティーを飲んだグループは、認知テストのすべての項目で、白湯を飲んだグループよりも高い成績を示しました。

たとえば、エピソード記憶を測る「写真記憶テスト」では、ペパーミントグループの成績が平均で約3点向上したのに対し、対照グループではむしろ1点以上低下していました。同様に、暗算を使った注意力と作業記憶の課題、単語の記憶、ブロックの順番を思い出す視空間記憶のすべてにおいて、ペパーミントティーを飲んだ参加者の成績が有意に改善しました。

同時に測定された脳の血流にも変化が見られました。近赤外分光法(NIRS)を使って前頭前野の血流量を測定したところ、ペパーミントを飲んだグループでは、酸素を多く含む血液(酸素化ヘモグロビン)の増加が確認されました。これは、脳がより多くの酸素や栄養を受け取っていたことを示しています。

しかし、ここで重要なのは、脳の血流の増加と認知機能の向上が直接的には結びついていなかったという点です。

つまり、血流が増えた人ほど成績が上がった、というような相関関係は見られませんでした。このことから、研究チームは「血流の増加は確かに起きているが、それが認知機能の改善を引き起こしているとは限らない」と結論づけています。

では、何が脳に効いていたのでしょうか?

研究者たちは、ペパーミントの主要成分であるメントールが関係している可能性に注目しています。メントールには、神経伝達物質アセチルコリン(acetylcholine)の分解を防ぎ、その働きを長持ちさせる性質があります。アセチルコリンは、記憶や注意といった脳の高次機能に関わる重要な物質です。