「既存客を飽きさせない」「新規客層の拡大」「話題性」

「吉野家」がラーメン系メニューを発売した理由について、自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏はいう。

「その理由は、 ・既存客を飽きさせない ・新規客層の拡大 ・話題性 を考慮したためだと考えられます。私たちは日々の食事で『何を食べようかな』と考えますが、ずっと同じものばかり食べる人は少なく、『昨日は〇〇を食べたから、今日は〇〇を食べよう』といったようにバリエーションを求める傾向があります。そのため町場の飲食店は日替わりランチを用意したりして、来店回数増加のための工夫をしています。本来はメニュー数を絞り、オペレーションを簡略化したほうが効率的ですが、お客さんに飽きられないよう、来店頻度を上げるために『茹でる』というオペレーションくらいなら加えられると判断してラーメン系のメニューを用意したのでしょう。

 また、麺のようなメニューの選択肢が増えると、女性や家族連れのお客さんが来店しやすくなります。女性にもラーメン好きは多いです。私のクライアント店では日替わりランチでラーメンを出すと女性客が多く来店されますし、子供たちはもちろん麺類大好きです。今までとは違った客層の拡大も狙っていることと思います。

 そして、吉野家のような大手チェーン店が新しいことを始めると、ニュースで取り上げられ、SNSでも話題となります。話題を耳にした人のなかで一定割合の人は来店します。存在を忘れられてしまうと他のお店にお客さんを取られてしまいますので、絶えず自分たちの存在をお客さんに意識してもらう必要がありますが、新商品は『試しに行ってみよう』『最近行ってなかったから久々に行ってみよう』と来店へのきっかけを生み出します。

 このように今回の吉野家の新商品投入は、どんな商売でも大事な『既存客を飽きさせない』『新規客層の拡大』『話題性』を狙ったものであり、『牛玉スタミナまぜそば』が絶対的なエースといえる商品になるかは分かりませんが、そのような試みが重要であることは間違いないと思います。この先に発売される新商品の中から、もしかしたらヒット商品が生まれるかもしれませんし、期待したほどの反応なく麺商品の提供が終わってしまうかもしれませんが、テスティングを込みにして絶えずチャレンジすることが大事ではないでしょうか」