そして、研究チームはこの分析によって、ある特定のパターンを見つけることに成功しました。
そのパターンこそが、「女性にだけ見られる“幼少期の貧困が将来の恋愛傾向に影響を与える”ルート」だったのです。
パパ活の背景にある「子どものころの世界の見え方」
研究の分析結果は、ある意味でとても明快でした。
“パパ活”のようなリソースを交換する関係に対する関心は、男女共通で「短期的な交際傾向(Short-Term Mating Orientation)」と強く関係していることがわかりました。
つまり、「すぐに親密な関係になるのに抵抗がない」「その場限りの関係でも構わない」と考える傾向が強い人ほど、“パパ活”に前向きな傾向を示したのです。
ですが、ここからが本題です。
同じように“短期的な交際志向”をもっている人でも、その背景には違いがあることがわかりました。
とくに女性の場合は、幼少期の家庭の貧しさや不安定さが、“パパ活”への関心を高める傾向に影響していたのです。
つまり、幼少期に家庭が貧しかったり不安定だった女性ほど、将来よりも「いま得られるもの」を重視する“短期戦略”をとるようになり、その結果、“パパ活”のような関係に興味をもちやすくなっていたのです。

一方、男性ではこのような因果関係は見られませんでした。
男性でも女性からお金をもらって性的関係を結ぶ人はいます。しかし男性の場合は、“お金をもらって性的関係を結ぶ”ことへの関心は単に「気軽な関係に抵抗がないかどうか」によって説明され、育った家庭環境の影響は統計的に有意ではなかったのです。
この結果から何が言えるのでしょうか?
まず重要なのは、金銭を受け取っての性的関係を許容する女性には、子どものころに育った環境の「未来は不確かで、今を生き抜くことが大切」という感覚が染みついている可能性が高いということです。
これは「生き延びるための知恵」として形成された適応的な考え方とも言えます。