SNSやニュースで目にする“パパ活”という言葉。若い女性が年上の男性と時間や親密さを共有し、代わりに金銭やプレゼントを受け取る関係――道徳的な是非はさておき、「なぜこんな行動を選ぶ人がいるのか?」という疑問を抱いたことはないでしょうか。

同じような疑問を抱いたハンガリーのペーチ大学(University of Pécs)の研究チームは、312名(女性192名、男性120名、18~50歳)を対象に、幼少期の家庭の安定性や経済状況と“パパ活”のような恋愛関係(sugar relationships)への関心への関連を調査しました。

すると、幼少期に家族資源が限られていた女性ほど、“今すぐ報酬が得られる関係”に惹かれやすいという傾向が明らかになったのです。そしてこの傾向は女性だけに見られ、男性にはあまり見られなかったという。

この研究の詳細は、2025年5月に科学雑誌『Evolutionary Psychology』に掲載されています。

目次

  • “パパ活”をめぐる意外な心理メカニズム
  • パパ活の背景にある「子どものころの世界の見え方」

“パパ活”をめぐる意外な心理メカニズム

Credit:canva

わたしたちが誰かに惹かれる理由は、ただの好みや性格の違いだけでは説明しきれないことがあります。

とはいえ、「お金をもらえるなら関係を持ってもいい」という考えはかなり特殊です。

ニュース等ではよく見かけるものの、身近でそうした関係を許容する人というのはあまり思い当たらないし、イメージできないという人も多いでしょう。

ここで注目したいのが、「ライフヒストリー戦略(Life History Strategy)」という考え方です。

これはもともと動物の進化行動を説明する理論で、人間に応用すると、「人生のどこにエネルギーを使うか」という個人の生き方の違いを説明するものです。

たとえば、将来の安定のためにコツコツ努力する“長期志向タイプ”と、目の前のチャンスを逃さず早めに利益を得ようとする“短期志向タイプ”に分けられます。