本書が提示する視座は明確である。 参政党の台頭は、日本列島だけで起きた孤立した現象ではない。それは、2016年にドナルド・トランプを大統領に押し上げ、英国にEU離脱を決断させ、ヨーロッパ大陸に右派ポピュリズムの嵐を吹き荒れさせた、あの世界的な政治潮流の、紛れもない日本版なのである。
グローバル化に取り残された人々の不満。自国のアイデンティティが失われることへの恐怖。エリート層や大手メディアに対する根深い不信感。そして、「自分たちの国のことは、自分たちで決めたい」という、素朴で、しかし強烈な主権回復への渇望。 本書は、この世界共通の「病理」と「願い」が、いかにして「参政党」という、日本独自の処方箋を生み出したのかを解き明かしていく。
そのために、まず第1章で、この世界的な潮流と、日本の「失われた30年」が生んだ特有の社会不安、そしてその不安の受け皿たりえなかった「既成政党の機能不全」という、参政党が生まれるべくして生まれた日本の「土壌」を分析する。
続く第2章では、SNSとリアルを融合させた、世界標準のポピュリスト戦略としての「参政党の戦い方」を解剖する。
第3章では、彼らの思想の核心に迫る。そこでは、作家・橘玲氏が描く冷徹なグローバル資本主義の世界観への、情念的なアンチテーゼとしての参政党の姿、そして「中国との対峙」という強力な旗印の意味を明らかにするだろう。
さらに第4章では、比較対象として「れいわ新選組」を取り上げる。なぜ、同じ「反エスタブリッシュメント」という水源から出発しながら、彼らは「右」と「左」、二つの異なる流れに分岐したのか。両党を比較することで、日本のポピュリズムの全体像を炙り出す。
続く第5章では、参政党の特異な支持層を解剖し、その成功が内包する「時限爆弾」、すなわち、カリスマ的指導部と新たに誕生するエリート議員との間に予測される深刻な軋轢について論じる。
そして最終章では、思考実験として「もし参政党が政権を取ったら、日本はどうなるか」をシミュレーションし、この運動が私たちの未来に投げかける、光と影を具体的に描き出す。