問題があるとすれば、核廃絶などのテーマにおいて、与党でありながら何も動かせないという無力感が、公明党内や支持母体の創価学会員に広がっていることだろう。

公明党が、核兵器禁止条約へのオブザーバー参加を自民党に強く働きかけるのは正しい方向性であり、短期的な日本外交とは切り離して、長期的目標として核廃絶のための道筋を模索するべきである。

その一環として「平和創出ビジョン」には、核兵器の先制使用や威嚇の禁止、自律型致死兵器(AI兵器)への規制、「人間中心AI」に関する国際ルールづくりなど、現代的課題への対応も盛り込まれている。

この構想を進めるにあたり、私は二つの提案をしたい。

第一に、常設事務局は東京以外に置くべきであり、具体的には神戸または広島がふさわしい。広島は「平和都市」としての国際的な象徴性がある一方、外交公館の不足や空港アクセスの弱さが難点である。対して神戸は、国際人材や外国人居住者が豊富で、関西圏の三空港も活用でき、大阪の総領事ネットワークを活かすことが可能である。京都や大阪は観光公害の懸念もあるうえ、神戸は近代以降の国際都市としての伝統があり、インバウンド推進の観点でも理にかなう。また、防災が協力の第一ステップであるならば、阪神・淡路大震災を経験した神戸は象徴性・実績の両面から極めて適している。

第二に、こうした構想には、総理経験者の協力を得るべきである。特に岸田文雄前首相は、外相を5年務め、語学力や国際感覚にも優れ、社交性もある。広島出身であることは、平和外交の象徴として強みとなる。コロナ禍で十分に外交力を発揮できなかったという悔いもあろう。彼には、ジミー・カーター元米大統領のように、元首相としての役割を世界の平和のために果たすことを期待したい。