ヨーロッパには、ロシアを含む多くの国が参加するOSCE(欧州安全保障協力機構/本部ウィーン)が存在するが、これにならい「北東アジア安全保障対話・協力機構」の設立を目指し、その常設事務局を日本国内に置こうという構想がある。
提案しているのは公明党であるが、これはたいへん意義深い構想であり、元首相経験者の協力も得て、与野党を超えて積極的に取り組むべきだ。できることなら、その本部を神戸か広島に設置するのが望ましい。
これまで「ハト派」か「タカ派」かの政治的立場は主に安全保障政策への対応で判断されてきたが、昨今の参院選では、外国人労働者や観光客に対する姿勢が争点となっている。なかでも、外国人排斥的な「ジャパン・ファースト」を唱える参政党が、うっかりすると比例区で第一党になる勢いである。これについては別途論じるが、深刻な問題は、世界平和に関する議論がほとんどなされていないことである。
「日本には脅威は存在しない」「脅威があるとしてもそれを招いたのは日本自身だ」といった極端な立場や、逆に「憲法9条は誤りで、早急に破棄すべき」といった急進的な声もあるが、多くの国民は、米国からの大幅な軍拡要請を現実として認識しつつ、なお平和主義を捨てることには躊躇しているのが実情である。
そうした中、日本が中立的な立場をとりうるウクライナやガザの問題などは、まさに外交的出番となるべき領域である。安倍晋三元首相が生きていれば何らかの対応をしていたかもしれないが、石破茂首相(仮定)のもとでは、外交的経験や知見の不足が指摘され、期待されにくい状況にある。それでも、石破氏には努力をしてほしいと思う。