加えて、目先の外交だけでなく、長期的に世界平和の再構築を主導する可能性を日本が追求するべきである。

その文脈で注目されるのが、公明党が2025年5月、「戦後80年・国連創設80年」に合わせて発表した「平和創出ビジョン〜対立を超えた協調へ〜」である。これは、国際医療NGO「AMDA」でアンゴラ、アフガニスタン難民キャンプ、スリランカ、イラクなどで医療支援のプロジェクト・コーディネーターを務めた谷合正明参院議員が中心となって取りまとめた。

「平和創出ビジョン」を提言する公明党の斉藤鉄夫代表(2025年5月13日)首相官邸HPより

この構想は、「人間の安全保障」と「法の支配」を基本理念に掲げ、力による現状変更を抑止し、多国間協調を通じて「命と尊厳を守る外交」を日本が主導する姿を描いている。その柱となるのが、OSCEをモデルにした「北東アジア安全保障対話・協力機構」の創設である。六者協議の参加国(日米中露・南北朝鮮)などを対象に、日本国内に常設事務局を設け、まずは災害対策・気候変動対応など非軍事的分野から協力を始め、次第に軍備管理、平和条約締結へと段階的に進める構想である。各国の反応も概ね好意的だという。

こうした構想が公明党から出された背景には、1999年の自民党との連立以降、「平和の党」としての看板が色あせたとの批判への応答もあるだろう。とはいえ、現在の国際情勢では、共産党・れいわ・社民などを除き、主要政党の間で対米同盟の重要性を認める点では大差がない。私自身は、バイデン政権下での米国のウクライナ・イスラエル支持がやや一方的だと感じているが、日本の世論はそれほど強い反発を示していないため、公明党が支持を失っている要因とはなっていない。

むしろ、中国・韓国に対する日本の世論は、政府以上に厳しい面があり、立憲民主党なども台湾・ウイグル問題で明確にアンチ北京の姿勢を取っているため、公明党が「親中すぎる」との印象で票を失っているわけでもない。