手術ロボットと聞くと、多くの人は「人間の外科医が操作するロボットアーム」を思い浮かべます。

たとえば、外科医がモニター越しに遠隔で操作する補助的な機械というイメージが一般的でしょう。

しかし、アメリカのジョンズ・ホプキンズ大学(JHU)の研究チームは、こうした常識を根底から覆す「完全自律型手術ロボット」の開発に成功しました。

その名は「SRT-H(Surgical Robot Transformer-Hierarchy)」。

研究チームは、このロボットが手術チームの音声指示だけで、自ら判断して臓器摘出手術を完了させたことを発表したのです。

この成果は、2025年7月9日付で『Science Robotics』誌に掲載されました。

※記事の後半では、実際の手術画像があります。苦手な方はご注意ください。

目次

  • 人間の医師の手を借りない「手術ロボット」の開発
  • 手術ロボットは胆嚢モデルに対して100%成功率で摘出手術を行える

人間の医師の手を借りない「手術ロボット」の開発

現在の医療現場で使われている手術ロボットは、あくまで「拡張された医師の手」にすぎません。

高精度な動作やミニマルな切開が可能ではあるものの、機械単体では判断も計画もできないのが実情です。

つまり、すべての動作は人間の外科医によって逐一操作され、機械自身は「指示待ち」の存在でした。

ところが、ジョンズ・ホプキンズ大学のチームが開発したSRT-Hは、自律的に手術を遂行するロボットです。

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完全自律型の手術ロボットを開発 / Credit:Canva

医師の操作を受けることなく、手術中に遭遇する予期せぬ状況にも自ら対応・修正しながら手術を完了する能力を備えています。

このSRT-HはChatGPTのような言語モデルで手術内容を理解しながら、映像ベースの模倣学習によって動作制御もこなせます。

このシステムは、従来の「シナリオ通りにしか動けない手術ロボット」とは一線を画します。