・23年度末:68億5百万円 ・24年度末:101億8千5百万円

およそ1.5倍に増加しているものの、農協からのコメの仕入れ額(相対取引価格)も1.6倍に高騰しているので、手持ち在庫「量」はほとんど変わっていない。よって、「買い占め・出し惜しみ」は行っていないと推測される。

つまり、「『買い占め・出し惜しみ』は行っていないが、『価格高騰分の利益』は享受している」ということになる。

もっとも、利益を享受しているとはいえ、コメ卸業者は一般の卸売業者と異なり、「白米」の製造工程の一部を担うという特性がある。農家が出荷するのは、最終消費者向けの完成品ではない。白米の「原材料」である。この「原材料」を検査・精米・包装を行い、完成品に仕上げているのがコメ卸業者である。これら付加価値を考慮すると、「儲けすぎ」とまでは言えないのではないだろうか。

木徳神糧が槍玉に挙げられた理由

では、なぜ小泉農水大臣は――「ある会社」としたものの―木徳神糧を取り上げたのか。シェア4%でしかない木徳神糧が、槍玉に挙げられたのはなぜか。

理由は、わかりやすかったからだ。

上場企業である木徳神糧は、有価証券報告書を提出しており、業績が「見える化」されている。よって、利益分析が非常にやりやすい。一方、他のコメ卸大手、全農パールライス・大和産業・神明ホールディングスなどは非上場企業であり、決算状況がわかりにくい。

わかりやすいから大臣が取り上げ、メディアで喧伝された。結果として「正直者が馬鹿を見る」ような事態になってしまったのが、今回の木徳神糧の騒動である。

市場がないコメ

このような事態に陥ったのは、コメの価格決定・売買プロセスが不透明だからでもある。この状況を打破すべく、23年10月に開設されたのが、コメの現物市場「みらい米市場」だった。

だが、取引は極めて低調だ。開設後1年で成立した取引は、わずか20件程度。要因は、売り手(農家)と買い手(コメ卸売業者)のニーズのミスマッチだという。出品で目立つのは「特別栽培米」などの高額なコメが多く、