しかし、外見が犬に似ているからといって、それが家畜化の証拠とは限りません。
そこで今回、ヨーク大学を中心とした研究チームは、このミイラを「包括的かつ多角的」に調べ直すことにしました。
まず、骨のサイズや形状を詳細に測定することで、現代のイヌやオオカミと比較しました。
また胃の内容物を分析し、彼らが何を食べていたかも調べました。
さらに遺伝子解析により、「トゥマト・パピー」が遺伝的に現代のイヌと近い存在なのかも確認されました。
1万4000年前のミイラは「オオカミ」の姉妹だった!家畜化した初期のイヌではなかった
綿密な調査の結果、最初に明らかになったのは、2体のミイラが遺伝的に姉妹であるということです。
年齢はともに生後2か月ほどで、骨の成長具合や胃の中に母乳の痕跡が残っていることからも、まだ離乳の途中だったと考えられます。
次に重要だったのは、DNA解析の結果、この姉妹が現代のイヌとは別系統にあたる、絶滅したオオカミの一種であることが判明したことです。
つまり、外見こそ「子犬」のようでも、彼女たちは「オオカミ」であり、家畜化された犬ではなかったのです。

さらに驚きの発見が、胃の中から検出されました。
なんと、絶滅したケブカサイ(学名:Coelodonta antiquitatis)の皮膚の一部が未消化の状態で見つかったのです。
成獣であれば現代のオオカミでも歯が立たないような大型動物ですが、幼獣だった可能性が高く、親オオカミが群れで仕留め、子どもに与えたものと考えられています。
それでも、幼いケブカサイでさえ現代のオオカミが狩る獲物としては規格外に大きい存在です。
そのため、この時代のオオカミは現代のオオカミよりも一回り大きく、強力だった可能性を示唆しています。
また、胃の中からはケブカサイの肉だけでなく、多様な食物が確認されました。