リアルやビデオ通話では、自分の顔や姿が相手に見えており、それによって他人からの評価を意識しやすくなります。
これが、羞恥心や防衛心となって自己開示の妨げになるのです。
しかし、非リアルアバターであれば、自分がどう見られているかを気にする必要がありません。
アバターの匿名性や、まるで別の人格になりきることで現実の自分の評価から切り離される「なりきり効果」が心理的な安全性を高め、「素の自分を見せやすくなる」と考えられます。
また、性別の影響についても顕著な傾向が見られました。
言語行動の分析によれば、自己開示スコアは「女性同士」>「男女ペア」>「男性同士」という順でした。

そして興味深いのは、そのような客観的データと主観的評価が一致しない点です。
主観的評価(参加者の認識のアンケート)のスコアは、「女性同士」>「男性同士」>「男女ペア(女性→男性の開示において)」という順だったのです。
つまり、「女性→男性」」の開示について、女性は「あまり開示できなかった」と感じていたにも関わらず、実際には多くの情報を語っていたのです。
これは、心理的な警戒心が実際の行動に必ずしも反映されるわけではないことを示しています。
今回の研究結果から得られる応用可能性は非常に広いと言えます。
例えば、「心理カウンセリングやメンタルケア」「上司と部下の1on1ミーティング」「介護者や患者との傾聴支援サービス」において、非リアルアバターを用いたVR対話を利用すれば、より深い「本音」が引き出せるかもしれません。
技術が進化し、私たちの会話の「場」がリアルからバーチャルへと移り変わっていくなかで、本音を語るのはむしろ仮想世界のほうが向いているのかもしれません。
「本当の相手を知りたいなら、バーチャルで」
それが、心の扉を開く新しい鍵になるかもしれません。