ですが、このアフターバーン現象はとんでもない医学的価値を秘めているんです。
もしアフターバーンの仕組みを解明し再現できる「アフターバーン薬」が開発されれば、誰もが休みながらにして、体を有酸素運動の最中のような状態にでき、お手軽なダイエットが可能になる可能性があるからです。
そこで今回、ケンタッキー大学の研究者たちは、過負荷運動(筋トレ)が行われた直後のマウスの筋肉細胞で何が起きているかを集中的に観察しました。
アフターバーンが起きて体が有酸素運動状態になるからには、筋肉細胞から脂肪細胞に何らかの「燃焼命令」が発せられていると考えたからです。
すると、非常に興味深い現象が確認されました。
無酸素運動の後に筋肉細胞は細胞膜に包まれた小さな袋を分泌していた

無酸素運動を行った筋肉細胞に何が起きているのか?
研究者たちは謎を解明するためにマウスに筋力トレーニングを再現する過負荷運動を行わせ、筋肉細胞に起こる変化を観察しました。

すると、過負荷運動を行った筋肉細胞から、細胞膜に包まれた小さな袋(小胞)が盛んに分泌されていることが判明。
また分泌された小胞の行先を追跡すると、脂肪細胞(白色)に取り込まれていることがわかりました。
さらに小胞を取り込んだ脂肪細胞では、なんと酸素を使った脂肪の分解が促進されていたのです。
この結果は、機械的な過負荷運動を行った筋肉細胞から発せられた小胞には、脂肪細胞に対して、有酸素運動のような脂肪の燃焼を行わせるための「命令書」が含まれていたことを示します。
また追加の研究により、小胞に含まれている命令書の正体が「miR-1」というタンパク質であり、受け取り手は脂肪細胞に存在する「Tfap2a」と呼ばれる調節遺伝子であると判明しました。