揺るぎない事業基盤と従業員への還元

 日高屋の強みは、DXだけではない。自社工場(セントラルキッチン)を保有し、主要な食材を集中生産することでコストを抑制している。また、出店エリアを首都圏に集中させるドミナント戦略により、配送コストも効率化している。こうした盤石な事業基盤が、価格競争力の源泉となっている。

 さらに特筆すべきは、従業員への手厚い還元だ。5年連続となるベースアップの実施や、利益の一部を「成長分配金」として社員に還元している。アルバイト・パート従業員(フレンド)に対しても、大規模な「フレンド感謝祭」を開催するなど、従業員満足度の向上に努めている。こうした取り組みが、従業員のモチベーションを高め、サービスの質を維持・向上させ、ひいては顧客満足度にも繋がっていると考えられる。

** 【ワークマン – 「ブレない軸」が顧客の信頼を繋ぎとめる】 **

 作業服からアウトドア・スポーツウェアへと領域を拡大し、一大市場を築いたワークマン。同社も2025年3月期上期(4~9月)に一部商品で価格改定を行ったが、「客数既存比-0.8%、チェーンストア売上比+1.1%」と、値上げによる影響は“出ていない”と回答している。なぜワークマンの顧客は、値上げを受け入れたのか。その理由は、同社が長年かけて築き上げてきた、顧客との揺るぎない信頼関係にあった。

「圧倒的な低価格」と「高機能」の両立

 ワークマンが顧客の支持を失わない最大の理由は、その事業の根幹にある「変わらない価値提供」にある。同社は、値上げ後も顧客が離れない理由として、以下の3点を挙げている。

 1.他社に負けない圧倒的な低価格  2.低価格だけではない、高機能性がある製品の販売  3.「やる値」の取り組みによる、プロ(職人)顧客の信頼維持

 ワークマンのブランドイメージは、「高機能な製品が、驚くほど低価格で手に入る」という点に集約される。この強力なコストパフォーマンスは、一朝一夕に築かれたものではない。サプライヤーとの強固な関係、需要予測に基づく大量発注、そして無駄を徹底的に省いた店舗運営など、長年の企業努力の結晶だ。

 顧客は、たとえ一部商品の価格が上がったとしても、「それでもワークマンは安い」「この機能でこの価格なら納得できる」と感じている。これは、同社が提供する価値が、価格という一面的な指標だけでは測れないことを示している。