実際、「自分の感情がよくわからない」「お腹が空いているのか分からない」「疲れているのに頑張りすぎてしまう」といった訴えは、こうした内受容感覚の信頼低下によるものかもしれません。
また、身体信号を正しく信じられないことで、「感情の反応がおかしい」「相手の気持ちが読み取れない」といった人間関係のトラブルや孤立を引き起こす可能性もあります。

身体の内側からの声に耳を澄ますこと――それは、私たちが自分自身とつながるための基本です。
「お腹がすいた」「胸が苦しい」「不安で心臓がバクバクする」
そんな体の声は、感情の羅針盤であり、健康のナビゲーターでもあります。
しかし幼少期に十分な感情的ケアを受けられなかった人は、この「体との対話」を信じることができなくなるのです。
そしてそれは、ただの“感覚の問題”ではなく、生涯にわたって続く心と体の課題を生む可能性があるのです。
チームは今後、12〜17歳の青少年を対象に、内受容感覚と虐待歴の関係をさらに詳しく調べる研究を進めています。
「体を信じる力」を育むこと。
それは子どもを守るということ以上に、人間としての根っこを守ることなのかもしれません。
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参考文献
Emotional abuse in childhood may erode trust in one’s own body
https://medicalxpress.com/news/2025-07-emotional-abuse-childhood-erode-body.html
元論文
A meta-analytic review of child maltreatment and interoception
https://doi.org/10.1038/s44220-025-00456-w
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。