1935年4月25日、豪シドニーにあるクージー水族館で、オーストラリア史上もっとも奇妙な殺人事件が幕を開けました。
その始まりは誰にも予想できない形で訪れます。
なんと水族館に展示されていた体長4.4メートルのイタチザメが突然、人間の左腕を吐き出したのです。
無惨に千切れた腕には、2人のボクサーがスパーリングをしているタトゥーが掘り込まれていました。
水族館に駆けつけた刑事たちは、あまりの衝撃的な光景に言葉を失います。
そして当然のごとく、このような謎が頭に浮かびました。
「一体なぜ人間の腕が水族館のサメの胃から出てきたのか?」と。
この事件は1935年当時の新聞『Sydney Truth』でも大々的に報じられ、今日と同じくらい信じがたいものとして受け止められました。
記事の見出しにはこう記されています。
「驚くべき悲劇――エドガー・アラン・ポーでさえ、最も奇怪な幻想の中にも想像しなかったような悲劇だ」
では、この片腕は誰のものだったのか、なぜこの人物の腕は水族館のサメの中から出てきたのか?
その謎を紐解いていくと、シドニーの恐るべき裏社会とのつながりが見えてきました。
目次
- サメが吐き出した腕は誰のもの?
- ジミー・スミス殺人事件、腕の行方は?
サメが吐き出した腕は誰のもの?
サメが吐き出した左腕は、鑑識の詳しい調査に回され、特徴的な刺青と指紋のおかげですぐに身元が判明します。
それは「ジェームズ・ジミー・スミス(James “Jimmy” Smith)」という男性のものでした。
ジミーは当時45歳のイングランド出身のアマチュアボクサーで、シドニー中心部の酒にまみれたビリヤード場で働いていた人物だったといいます。

その後に判明したのは、ジミーがシドニーの裏社会と多くの関係を持っており、特に「レジナルド・ホームズ(Reginald Holmes)」という怪しい実業家とのつながりがあったことです。