懸念されることは、民主主義を掲げる欧米諸国で民主主義への失望、カリスマのある指導者への待望が生まれてきていることだ。
米国は世界の民主主義の拠点と見なされてきた。米国では、共和党と民主党の2大政党が選挙戦で主導権を争う。米国は51%の民主主義体制である一方、大統領制だ。勝利した政党は政治権力を支配できる。下院と上院で過半数を占めている現在のトランプ政権は米歴史上、非常に強固な政治基盤を誇っているといえる。それ故に、左派系メディアや知識人はトランプ氏の政治を独裁的、専制的なやり方として警戒する。理由がないわけではない。トランプ政権は、専制的な独裁政治が実施できる潜在的可能性を有しているからだ。
米国の政治学者ジェームズ・M・パターソン氏は先月末、ドイツのウェブポータルKatholisch.deで「ネオ・インテグラリズム運動」(ネオ統合主義、ネオ全体主義)の台頭に警戒を呼び掛けている。現在、米国とヨーロッパの若い保守派カトリック神学者、聖職者 、そして著名な知識人の間で勢いを増している知的運動だ。彼らは社会の分断と価値観の衰退の原因は自由主義にある、と考えているのだ。
パターソン氏は「バンス米副大統領もこれらのグループの影響を受けている。バンス氏は著名なネオ・インテグラリストの思想家たちと交流し、カトリックの影響を受けた権威主義的な立場を主張してきた。もはや古典的な保守主義ではなく、急進的なポスト・リベラルな考え方を持つ、米国における新たな右派の一派だ」と指摘している。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年7月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。