実際、政策も国家観も異なる政党からなる政権は政党が有権者に約束した政策を貫徹できない状況に落ちやすい。どうしても譲歩が出てくる。その結果、支持した政党が公約を実施できない状況を見て、有権者には政治不信が生まれてくる。一方、政権は機能不能な状況に陥り、中途半端な政治しか実施できない。これは有権者だけではなく、政党にとっても不幸なことだ。
民主主義にはメリットとデメリットがある。メリットは、好ましくない政府が生まれた場合、次期選挙でその政党を支持しないことで制裁できる。すなわち、一種の危機管理が機能する。デメリットの場合、寄り合い所帯の連立政権が生まれたとしても、時代が必要とする改革を実施することは難しく、政治は停滞しやすい。
ところで、6日の夜、オーストリア国営放送(ORF)のニュース番組を見ていると、モスクワでヨシフ・スターリン(1879から1953年)を称賛する傾向が台頭しているというのだ。スターリンは多数の国民を粛正していった独裁者のソ連共産党指導者として知られているが、スターリン像に献花するモスクワ市民は「スターリンは戦争で勝利した指導者だ」、「ソ連を1950年代、国民経済を成長させた政治家だ」と答えていた。
スターリンの人物像への関心の背景には、ロシアのプーチン大統領への評価へのプロパガンダといったクレムリンの高等戦略があるかもしれない。ちなみに、ロシアの著名な哲学者アレキサンダー・ジプコ氏(Alexander Zipko)は独週刊誌シュピーゲル(2013年7月8日号)とのインタビューの中で、「プーチン氏は生来、自己愛が強い人間だ」と述べる一方、「ロシア国民は強い指導者を願い、その独裁的な指導の下で生きることを願っている」というのだ。同氏によると、「ロシア人は自身で人生を選択しなければならない自由を最も恐れている」という。

プーチン大統領の新年の挨拶 クレムリンHPより