カナダのダルハウジー大学(Dalhousie University)を中心とした国際共同研究チームによって、生命とウイルスの境界線を揺るがす非常に奇妙な古細菌が発見されました。
この微生物は「スクナアルカエウム・ミラビレ(Candidatus Sukunaarchaeum mirabile)」と呼称され、ゲノムの大きさはわずか23万8000塩基対と、これまで知られていた最小の古細菌ゲノム(約490 kbp)の半分以下しかありません。
また、このゲノムにはほぼすべての代謝機能が欠落しており、DNA複製やタンパク質合成といった自己複製の基本機能だけに特化しています。
今回の発見は、細胞としての性質を持ちながらウイルスのように宿主細胞に依存しているという、生命の定義を根本から揺さぶるものです。
この奇妙な生命体は一体どのようにして誕生したのでしょうか?
研究内容の詳細はプレプリントサーバーである『bioRxiv』にて発表されました。
目次
- 生命の定義が今、根本から揺らいでいる
- 生命と非生命の「あいだ」にいる奇妙な微生物
- 「生命の境界線」再考——スクナ古細菌が教えること
生命の定義が今、根本から揺らいでいる

「生きている」とはどういうことでしょうか?
植物や動物が生きていることはわかりやすいですが、ウイルスはどうでしょう?
学校の教科書では、ウイルスは「自力で増殖できず、自分自身でエネルギーも作れないから生物とは呼べない」と書かれています。
細胞を持たず、宿主となる生き物に寄生しなければ増えることができないため、「生命」とは言えない存在として扱われてきました。
また、ウイルスの遺伝子は非常に単純で、生物の遺伝子とは大きく異なることも「生命」から外される理由のひとつでした。
というのも古くから言われている生物の要件としては