上位クラブによる下位クラブからの選手引き抜きが頻発する現状は、Jリーグが「弱肉強食の時代」に突入したとの見方も出来るだろう。前述したような移籍劇は「降格しそうなチームからの個人脱出」と、時としてサポーターの間で議論を呼ぶこともあるが、選手が自らのキャリアを守るためには致し方無いだろう。

また、この現象は、欧州におけるビッグクラブと中小クラブの関係に似ており、Jリーグの競争がグローバルスタンダードに近付いてきたことを意味するとも言える。

Jリーグ 写真:Getty Images

下位クラブが生き残りために出来る施策とは

とはいえ、Jリーグにおける「弱肉強食」は、まだまだ欧州ほど極端ではない。Jリーグでは、リーグ戦順位に基づいた分配金制度や地域密着の理念が、クラブ間格差を一定程度緩和している側面がある。

それでも上位クラブの補強が下位クラブの戦力低下を招く場合、リーグ全体の競争力や魅力に影響を及ぼす懸念もある。リーグの均衡を保つためのアイデアや、競争力を保つためのルール作りが議論される必要がある。リーグ全体の魅力を持続するためには、上位と下位のバランスが重要だ。

例えば、下位クラブが有望な若手を育成し、上位クラブに高額で売却する「育成型クラブ」の経営スタイルは、持続可能な経営戦略となり得るだろう。主力選手の流出は短期的には痛手だが、長期的には育成やスカウティングの強化で対応することは可能だ。地域の若手を発掘し育成することで、移籍金を獲得するサイクルを確立できれば、持続可能な経営が実現する。また、下位クラブが上位クラブからの期限付き移籍選手を受け入れることで、チームの競争力を維持する戦略も有効だ。

Jリーグが「弱肉強食」の傾向を強める中、リーグの持続的な発展には様々な施策が考えられる。

・移籍金分配の強化:下位クラブが上位クラブからの移籍金で財政を安定させ、育成や施設投資に回せる仕組みを強化する。
・若手育成の支援:育成型期限付き移籍制度をさらに拡充し、下位クラブでの出場機会を保証することで、若手の成長とリーグ全体のレベルアップを図る。
・特別登録期間の活用:クラブW杯のような国際大会に合わせた特別登録期間を戦略的に活用し、全クラブが戦力を強化する機会を増やす。
・ファンエンゲージメントの強化:下位クラブが地域密着の魅力を高め、選手流出に歯止めをかける。