●この記事のポイント ・ウェザーニューズ、AI活用などによる業務効率向上によって月あたり7000時間の労働時間削減 ・浮いた時間を顧客への新規提案や解約率低下施策などカスタマーサクセスに充てて「攻めの仕事」に ・中途採用を減らすことで人件費の抑制効果も
世界最大級の民間気象情報会社であるウェザーニューズが、AI活用などによる業務効率向上によって月あたり7000時間の労働時間削減(AI活用以外の取り組みによる分も含む)を実現。2025年5月期は過去最高益を見込むなど、業績改善にも影響をもたらしている。同社は浮いた時間を顧客への新規提案や解約率低下施策などカスタマーサクセスに充てて「攻めの仕事」を増やすのに加え、中途採用を減らすことで人件費も抑制するなど、大きな効果が出ている。具体的にどのようなかたちでAIを活用しているのか、また、全社的な積極的活用の推進のカギとなった要因は何か。同社に取材した。
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これまで手間がかかっていた作業の時間を効率化によって削減
同社が提供する天気予報アプリ「ウェザーニュース」は、4700万ダウンロードを突破し、一般ユーザーからも高い認知を得ている。また、業種別に特化した気象コンテンツ「ウェザーニュース for business」も展開しており、工場の落雷対策や食品メーカーの配送ルート交通影響予測など、気象情報を活用してさまざまな業界の事業の判断をサポートしている。
同社の強みは、創業以来蓄積してきた気象データや各業界のビジネスデータ、高い精度を実現する予報技術という独自の資産を活用し、継続的に新しいサービスの開発に役立てている点だ。それにより増収増益が続いており、2025年5月期連結決算は最高益を更新する見込み。
同社はオペレーション部門が24時間365日稼働しており、法人・個人客に対して法人・個人客それぞれの市場に応じたサービスを提供しているが、AI活用を含めた全社的な業務効率改善によってトータルで月あたり7000時間の削減を実現することに成功したという。削減された労働時間のすべてがAI活用によるものではないが、具体的にどのような取り組みを行ったのか。ウェザーニューズ執行役員でテクノロジー・プロダクト責任者の出羽秀章氏はいう。
「例えば海運会社様向けのサービスでは、船長さんとメールなどでコミュニケーションをして最適な航路を提案しますが、メールですとオペレーターが文章を読んで必要な人に情報を渡していくといった煩雑な作業を行う必要があります。そこで、AIを用いて内容を把握して適切な次のアクションにつなげるようにしました。AIでメール文章の内容の要約もできるので、作業時間が減りました。
BtoBのお客様は電話でお問い合わせをいただいて今後のアクションについて対応策をお伝えすることもあり、毎回やりとりの内容を記録に残すという作業に時間がかかっていましたが、AIを使って電話での会話内容を自動で要約して記録するようにしました。法人のお客様向けには定期的に成果を報告書にまとめて提出していますが、気象データなどの情報を集めて要約して文書を作成するという作業にAIを活用し、作業時間を短縮しました。
個人向けのBtoS(サポーター)では、サポーターの方々にウェザーニュースのスマホアプリからウェザーリポートというかたちで空の写真を送っていただき、弊社の気象予報に活用していますが、その写真の分類・判別をAIを使って自動化できるようにもしました」