一般に単純比では強化費が高いクラブが上位に位置する傾向が見られるが、前述のデータからは予算だけが成功を保証するわけではないことがわかる。
また、勝ち点1あたりのコスト(強化費÷勝ち点)は、予算の使い方や監督の戦術、新加入選手のフィット感などが、強化費の効果を大きく左右することを示している。例えばクラブの目標が「優勝」なのか「J1残留」なのかによっても変わってくることから、同コストが高くて優勝を目指すヴィッセル神戸、浦和レッズなどを指して一概に「コスパが悪い」とも言い切れない。
まずは、今シーズン初のJ1を戦うファジアーノ岡山が、勝ち点1あたりのコストが最も低く(0.44億円)、低予算で多くの勝ち点を獲得していることがわかる。
神戸(現4位)の場合、2連覇中の王者として高予算を生かして質の高い選手を揃え、吉田孝行監督の戦術が投資に見合った安定した結果を生んでいる。柏レイソル(現2位)のリカルド・ロドリゲス監督は、教え子の選手を積極的に獲得した上で攻撃的なスタイルを採り入れ、チームを活性化させた。
京都サンガ(現6位)やアビスパ福岡(現10位)も、低予算で効率的に勝ち点を得ており、コストと勝ち点のバランスが良いクラブと言えよう。セレッソ大阪(現8位)も中程度の予算ながら安定した成績を維持。若手育成と的確な補強のバランス、監督の采配が成功の鍵となっている。

コストパフォーマンスの悪いクラブ
一方、最も非効率なのが最下位に沈む横浜F・マリノスで、勝ち点1を拾うのに約2.64億円も費やし、コストパフォーマンスが悪いと言える。中心選手のケガによる戦線離脱や、度重なる監督交代による停滞が原因とみられ、高額な強化費の効果が十分に発揮されていない。
また、名古屋グランパス(現14位)の長谷川健太監督は、低いシュート数とxG(リーグ4位の低さの39.5)が課題で、強化費に見合った攻撃力を発揮できていない。川崎フロンターレ(現5位)はエリソンのケガによる離脱が攻撃力低下を招き、強化費の効果を薄めている。チーム内の選手の相性やケガ人の影響ばかりは、予算だけではカバーできない要素だ。