その住宅価格もバブル崩壊から20年経ち、リーマンショックを経た2009年頃には大都市部で底打ち傾向が見られ、不動産価格に回復の兆しが見えます。つまり不動産価格は将来の物価高を既に暗示したのです。にもかかわらず一般物価は消費者の激しい抵抗で物価の頭が抑えられます。そこに発生したコロナは経済をいびつなものにしたのですが、もう一つ重要なのはそれまでの1ドル110円程度の為替レートが2022年ごろを契機に円安に進みます。理由は諸外国との金融政策の差が如実に表れたからです。これにより輸入価格が上昇、コロナによる物流停滞もあり、企業の我慢の限界を超えるのです。

私が見る2022年から始まる物価高は日本経済にとって起こるべくして起きた悪い物価高とも言えます。

ではこれを与党の給付金案や野党がいう消費税減税で乗り越えられるかといえば一時しのぎであり、根本解決にはならないのです。物価は長い上り坂を上がり始めたところです。とすれば消費税を時限で下げるとか、食品の消費税を下げるといった小手先では効果は出ず、抜本的な対策が必要です。残念ながら日本は自給自足経済が成り立たないので輸入に頼る以上、方策は限られます。一番効果的なのは金利を引き上げ円高にもっていくこと、これは即効性があります。輸出は基本的に現地化を進めるべきだと思います。そうすればアメリカの関税問題のようなものが発生しても避けられます。

次に政治レベルで検討してもらいたいのが財務省改革と特別会計の在り方です。特別会計はその趣旨や目的が明白で収入と支出を個別に計上するのですが、13ほどある特別会計はかなりの好決算をたたき出しています。例えば24年7月に発表された23年の特会会計では外国為替資金特会が3.9兆円プラス、年金特会は4.6兆円などで特会の合計で12.7兆円も黒字なのです。トヨタの黒字額が4.9兆円ですからいかに大きな金額かお分かりになるでしょう。一般会計とは全く違う様相とも言えます。この黒字の配分がいかにもご都合主義的であり、兆円単位のお金がごく一部の人の采配で決まっているのです。