交渉の早い段階で、日本政府内では米国産コメをミニマムアクセス枠で特別に受け入れる案も浮上していました。TPPでは年間7万トンの米国産コメ輸入枠が設けられていた経緯もあり、これを再活用する選択肢があったはずです。しかし日本政府は農業を守る姿勢を貫き、結果としてコメの譲歩を拒みました。そのため、トランプ氏の苛立ちはコメ問題に集中し、自動車への高関税という報復的措置につながる懸念が高まっています。

コメや原油の輸入拡大は物価高に苦しむ国民にとって救いになるはずでしたが、日本政府はそれを拒んだことで、自動車産業を犠牲にするかたちになりつつあります。もし相互関税が30〜35%に設定されれば、自動車には最大55%の関税が課される可能性もあり、日本最大の輸出産業が壊滅的な打撃を受けかねません。

自動車メーカー側としては、今後は米国での現地生産へとシフトする構えも見られますが、国内から自動車産業が失われれば、関連する500万人以上の雇用が失われ、日本経済に計り知れない影響を及ぼすことになります。それにもかかわらず、首相や官房長官が「農業を犠牲にしない」と繰り返し発言したことに疑問を感じざるを得ません。