3. 大統領選の結果をひっくり返した「誤報ヘッドライン」
1948年11月3日、アメリカ国民は衝撃的な新聞の一面を目にする。「デューイ、トルーマンを破る(Dewey Defeats Truman)」。シカゴ・デイリー・トリビューン紙が、高らかに次期大統領の誕生を報じたのだ。
しかし、唯一の問題は、現職のトルーマンが地滑り的な大逆転勝利を収めていた、という事実だった。当時、ほとんどのアナリストや世論調査が共和党候補デューイの圧勝を予測。それを鵜呑みにした新聞社は、組合のストライキで締め切りが早まったこともあり、フライングで「当確」を報じてしまったのだ。
翌朝、勝利したトルーマン大統領が、この誤報記事を手に満面の笑みで写真に収まる姿は、あまりにも有名だ。この「デューイ、トルーマンを破る」という見出しは、今や「世紀の大誤報」や「盛大な予測ミス」を意味する、歴史的な慣用句となっている。

(画像=画像は「Wikipedia」より)
4. 10億円を消した「1つのコンマ」
2006年、カナダの通信大手ロジャース・コミュニケーションズ社は、たった一つの読点(コンマ)によって、1000万カナダドル(当時のレートで約10億円)近い損失を被る羽目になった。
問題となったのは、競合他社との間で交わされた、電柱の使用に関する契約書の一文だ。契約期間を定めたその文章に打たれた1つのコンマのせいで、契約をいつでも一方的に解除できる、と相手方に解釈されてしまったのだ。ロジャース社側は、5年間の契約が保証されていると信じていたが、裁判所は相手方の解釈を支持。同社は、より高額な料金での再契約を余儀なくされた。
この事件はカナダ全土で「コンマの価値」についての議論を巻き起こし、法曹界の契約書作成実務にも大きな影響を与えた。たった一つの点が、大企業の運命を左右し、莫大な損失を生んだ、まさに「史上最も高価なコンマ」事件である。