では離婚した方が良いのか、という相談にお前はどう答えたのか、というと「すればよい」です。その方のお子さんがあと7-8年もすれば社会人になる、その時残されるのはご夫婦だけ。仮面夫婦で人生そこから40年も一緒にいることに耐えられるか、これが私の判断の基準でした。夫婦の意見の相違の場合は双方が歩み寄るケースはあります。ただ歩み寄りに困難なことが2つあります。一定年齢になってからの金銭感覚と食事の好み。これは合わないと厳しいのです。あまり詳しくは書けないですが、今回のケースはお金が絡んでいます。

判断とはより事実関係を煮詰め、そのエッセンスがどこにあるか、個々人の個性や習慣、癖、価値観をどれだけ客観的に見抜くかにあるのです。また女性が男性に相談する場合の期待も2つあります。1つは論理的で説得力ある答え、もう1つが心の包容力。平たく言えば優しさです。それも表面的なものではなく、寄り添う優しさでしょうね。

日経ビジネスの特集に「意思決定の技法」というのがありました。そのキーワードは認知バイアスだと読み取りました。認知バイアスとはたった一言で述べると「思い込み」のようなもの。記事のプロローグでは日産がホンダとの提携話が破綻したケースについて認知バイアスがあったとしています。私も以前、日産の思い込みである過去の美酒や栄光に浸り過ぎてプライドだけが残ったという趣旨のことを書かせていただいたと思います。会社という組織は頑強な組織バリアに囲まれ、重要で繊細な判断であればあるほどクローズドなところで認知バイアスに支配された環境下で行われます。

日産・内田誠前社長 同社HPより

「お前は外部の人間なのに何様だと思っているのだ」というドラマに出てきそうなセリフはごく普通に交わされます。ですが、ある一つの組織にしか所属したことがない人ほどその認知バイアスは強く、判断ミスをしやすいとも言えるのです。

故に私が先ほど離婚の相談を受けたというのは私がかなり第三者的であり、冷静に判断できる立場にあったとも言えるのです。