その方法として、共産党は「多数者革命論」(党綱領四=13。上田耕一郎著「現代日本と社会主義への道」)を掲げるが、他方において「プロレタリアート独裁」(党綱領四=16「社会主義をめざす権力」)を放棄せずに温存している。不破哲三氏(共産党前議長)も「社会主義日本では労働者階級の権力、即ちプロレタリアート独裁が樹立されねばならない」(不破哲三著「人民的議会主義」)と断言している。
「プロレタリアート独裁」は、日本共産党の指導原理である科学的社会主義(マルクス・レーニン主義)の核心であり、資本主義から共産主義への過渡期の国家がプロレタリアート独裁である(マルクス著「ゴーダ綱領批判」)。そこでは、反革命勢力や反革命分子に対する法律によらない暴力による容赦のない弾圧殺戮が正当化されるのである(レーニン著「国家と革命」、スターリン著「レーニン主義の基礎」)。
このような「プロレタリアート独裁」(共産党一党独裁)が日本など先進資本主義諸国における「自由民主主義体制」と矛盾し根本的に対立することは明白であり、今や時代錯誤と言っても過言ではない。
西欧共産党の「プロレタリアート独裁」放棄
このため、「プロレタリアート独裁」を不可欠とする共産主義イデオロギー(マルクス・レーニン主義)を掲げていた西欧先進資本主義諸国の多くの共産党は衰退した。
「プロレタリアート独裁」を放棄し、イタリア共産党は解党して左翼民主党になり、フランス共産党、スウエーデン共産党、イギリス共産党も「プロレタリアート独裁」を放棄した。スペイン共産党は弱体化した。オランダ共産党やフィンランド共産党は自主的に解散した。旧西ドイツ共産党は1956年に非合法化され、アメリカ共産党は1954年の共産主義者取締法により非合法化された。
これらの西欧先進諸国の共産党は、たとえ存続したとしても、著しく衰退し、その政治的影響力はいずれも極めて微々たるものとなっている。