この新発見によって、こうした基本的な細胞の「お掃除」機能が障害される遺伝性疾患の仕組みを、科学者たちがよりよく理解できるようになる可能性があります。
「これは、細胞の中に新しいリサイクルセンターを発見したようなものです」と語るのは、バージニア大学の分子生理学・生物物理学部門のセハム・エブラヒム博士です。
「ヘミフュソームは、細胞が物質をどう梱包し、処理するかを管理する役割を果たしていると考えられます。これがうまく機能しなくなると、全身のさまざまな器官に影響を与える病気につながるかもしれません」
そのような疾患の一つが、ヘルマンスキー・パドラック症候群です。
これはアルビノ(白皮症)や視覚障害、肺疾患、血液凝固異常などを引き起こす稀な遺伝性疾患で、細胞が内部の物質を適切に扱えないことが原因とされています。
まだヘミフュソームの機能は解明を進めているところであり、どのように医療に役立つかはわかりません。
それでも今回の発見は、ただ新しい小器官が見つかったというだけではありません。
クライオ電子トモグラフィーという革新的な技術によって、これまで見過ごされていた構造――細胞の中の“小宇宙”が、初めて明らかになったのです。
研究者たちは今後、ヘミフュソームがどのように作られ、何をしているのか、どんな病気と関係しているのかをより詳しく明らかにしようとしています。
この“マフラーを巻いた雪だるま”が、細胞の中で何をしているのか。
まだ全貌はつかめていませんが、私たちの体の中には、まだまだ知られざる「ミクロの世界」が広がっているのだと、改めて感じさせてくれる発見です。
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参考文献
Scientists Discover Unknown Organelle Inside Our Cells
https://newsroom.uvahealth.com/2025/06/25/scientists-discover-unknown-organelle-inside-our-cells/