私たちの体を構成する数十兆個の細胞。
その細胞の中に、これまで知られていなかった未知の細胞小器官が見つかったようです。
米バージニア大学(UVA )と国立衛生研究所(NIH)のチームは、ヒトの細胞内で専門家すら知らなかった謎の構造物を発見し、これを新たに「ヘミフュソーム(Hemifusome)」と名付けました。
見た目は、まるでマフラーを巻いた雪だるま。
大きな丸に小さな丸がくっつき、その境界には薄い線――まるで「仕切り」のような構造があります。
ヘミフュソームは一体どんな仕事を担っているのでしょうか?
研究の詳細は2025年5月17日付で科学雑誌『Nature Communications』に掲載されています。
目次
- 細胞内に「未知の雪だるま」を発見?
- 細胞の中の「リサイクル拠点」か?
細胞内に「未知の雪だるま」を発見?
細胞の中には、ミトコンドリア(エネルギーの発電所)やリソソーム(分解工場)など、さまざまな「細胞小器官」と呼ばれる装置が存在しています。
どれもそれぞれの役割を持ち、生命活動を支えています。
今回の発見は、そんな「おなじみの装置」たちの間に、もう一つ、専門家さえ知らなかった小器官がひっそりと存在していたという話です。
研究チームは、細胞の超詳細な構造を撮影できる「クライオ電子トモグラフィー(cryo-ET)」という特殊な技術を使って、ヒト由来の細胞を凍結状態で観察していました。
すると、ある特徴的な形をした構造が、頻繁に画像に現れてくるのに気づいたのです。
それが「ヘミフュソーム」でした。
実際の画像がこちら。

小さな小胞(袋のような構造)が、大きな小胞にくっつくように並び、その接合部には「半融合(ヘミフュージョン)」と呼ばれる特殊な膜の境界ができていました。